2018年08月05日

8月6日朝2

広島を離れるのは寂しいが家族に会えるのはやはり嬉しい。少し気分が明るくなった真一は、9時まで散歩をすることにした。

手に入るものなどないに等しいが、淡路島にはないものをお土産にしてやろう。何がいいだろうか。そんなことを考えながら相生橋の上へと入った。

相生橋は本川と元安川をまたいでかかる、まるで猿股のような橋である。「アメリカならあ、さしずめ“ T ”じゃ。T-backじゃ。」戦争が始まるまで、外国語大学で英語を専攻していた真一は、独りほくそ笑んだ。

「まあ、ええか。」戦争で一切の財産も何もかも失いつつある。しかし、人生もこの川のようなもの。流れていって海へとかえり、終わる。それでいいのかもしれない。流れにただ身を任せれば。

水を満々とたたえて雄大に流れる元安川の流れを、橋の上から飽きるともなく見ていた。

ここ広島は水の都である。太田川はよこがわの北側で六つの支流に別れる。満々と水をたたえ休むことなく流れ続ける六つの川。ぼんやりと川面を見ていたが、蝉の声で「はっ」と我にかえる。

「もう8時か。」そろそろ店に帰って用意を始めるか。懐中時計で時間を確認するとそう考えた。

中洲から木橋を渡り、広島県産業奨励館を右に見ながら歩き続ける。

幟町のおせんていまで来た時だった。盛大に鳴く蝉の声に混ざってかすかに飛行機の飛ぶ音が聞こえた気がした。

雲ひとつない夏の空を見上げる。

三機のB29が飛んでいるのが目に入った。爆撃にしては結構、高度が高かった。「偵察か」呟いた時だった。

「あっ、何か落とした!」隣にいた子ども達が口々に叫んだ。

キラリと光るものが見えた。

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提供:広島平和記念資料館/撮影:米軍
posted by Mukai Kumotaro at 09:14| 日記