2018年08月11日

一週間後

アメリカの戦略核兵器、原子力爆弾が広島へと実戦投下されて一週間が過ぎていた。

わたくしの祖父、木谷真裕は真一の安否を確認するため皆んなの反対を押し切り、広島へと向かった。

家族に見送られ朝早く洲本の家を出ると、岩屋から船に乗り神戸へと向かった。船中も広島に落ちたという新型爆弾のことで持ちきりだった。そしてどうやら長崎にも落ちたとの噂だった。

噂は混沌として判断に苦しむが、どうやら広島が壊滅的被害を受けたことは確からしい。

しかし自分の眼で確かめるまでは信じたくはなかった。

大阪から広島行きの電車を探した。人で混雑する駅の構内に、広島への電車が完全に不通になっていることが、頻りにアナウンスされていた。

なんとか尾道まで行く電車を探し、ぎゅうぎゅうの車内に身をこじ入れる。途中、何度か空襲警報が鳴り電車が止まったが何もなかった。

そろそろ昼だからか車内は静かで、皆んな騒ぎ疲れたかのようだった。

尾道で汽車を乗り換えると、一路、広島市内を目指す。途中、軍のトラックが市内へと向けて何台も走って行った。

今日は小雨交じりの空で涼しいぐらいだった。噂では広島に黒い雨が降ったとか。

その雨に当たると髪の毛が抜けてしまうとか。

「そんなことがあるのだろうか。」真裕には、わからなかった。

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ヒロシマを描いた井伏鱒二の名作『黒い雨』。この小説を原作に撮られた今村昌平監督の映画は、ホラー映画のようで観ていられなかった。
posted by Mukai Kumotaro & Duex Shrine at 10:56| ブログ?