2018年12月16日

読了

吉村昭著『破獄』読み終わりました。四度も脱獄した死刑囚のお話で実在の人物がモデルになっているらしいです。

閉じ込められても閉じ込められても、それを破る男。それを防ごうと苦心する男たちの息詰まる攻防。

クソ寒い淡路島で読んでいたけれど、零下30度なんていう網走刑務所の記述があると比較して大したことないなあ。と思ってしまう。

そう、歴史上一度も破獄されたことのない網走刑務所に送られるが、そこからも脱獄する。

極寒の刑務所から逃げるために、頭しか入らない扉ののぞき穴から出る。邪魔な服を全部脱いで褌一丁で逃げ出すのだから考えただけでも震え上がる。

その網走からは一年間も逃亡していた。

わがままでまったく言うことを聞かない男の話を読んでると、だんだん頭にきて腹が立ってきて早く撃ち殺せ。とか無茶なことを思ってしまったり。

最終的に網走でも捕まり64時間かけて汽車で府中まで送られる。

64時間!メキシコの田舎町パツクアロまで48時間かかってへとへとになったけどもっとです。大変だ。

府中刑務所の所長がどうすれば逃げないか?と考えて、常識を次々に破っていくのに感動しました。

今までは、逃げないようにと閉じ込めることに腐心していたが、それに反発して彼は脱獄を繰り返していたのだった。

所長は逆に信用して温情を次々にかけていく。

そうすると男はその温情にだんだんと反抗的な態度を改めていく。その記述にまた感動する。

そんな簡単なこと。と思うけれど、この思い込みや常識を破るというのが本当に難しくて勇気がいるのです。

最後のほうのこの所長の心情の記述が圧巻で文章を読んでは本を閉じ、自分の心の中に染み込んでいくのをゆっくりと味わっていました。

人間というのは”心”なんだな。と思った。人の心をうごかすのは”心”なのだ。とも思った。

当たり前のことだけどその当たり前がなくなっている、東京というところ。

あっ、東京に戻ってきました。心が狭いんだな都会の人たちは。大らかさのかけらもない人たち。そんなに急いで何処へいくのか。

心を亡くすと書いて忙しいと読みますが、東京の街を歩くと忙しくて目が回ってしまいます。

そんな、東京に年内はおります。そして今日は古巣・壺中天へといって後輩、若羽幸平の作品を観ます。

壺中天の限られた空間の中に、どんな宇宙が生まれるか。

壺の中にこもって死にものぐるいで創作するが、端から見てると別に死ぬわけではなし。何をそんなに必死になっていたんだろうと。思い返したりもします。

もっと気楽にどうでもいい、なんでもいい。これでいいのだとやれればいいのにな。

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壺中天で最後に創った作品『底抜けマンダラ』より。photo by Manami Midorikawa
posted by Mukai Kumotaro & Duex Shrine at 08:20| ブログ?