2021年01月22日

シェルターのなかへ

シンイチは、煙をまきあげながら雑踏を歩くブダマツを追いかける。

からだ中にお香のようなものをつけているのだ。

みんなこちらを見ながら煙をよけていく。

その煙に隠れるようにシンイチは歩いていく。煙はとろけるようないい匂いをさせている。ブダマツが雑踏から細い道へと入っていくのでついていく。一歩入ると、ひと気はなかった。

歩くスピードがはやくついていくのが精一杯、聞きたいことが山ほどあったが聞けなかった。

路地からはなれてすこし入ったところにいき、ブダマツがあたりを見回して土をどけると地面に板があらわれた。板をあけて蝋燭をともす。

うながされてシンイチは、はしごを降りていく。カビ臭いようなにおいがあたたかい空気と一緒に立ちのぼってくる。

はしごを2メートルほど降りるとひとがひとり通れるぐらいの通路があった。モクモクとブダマツが降りてきて先へいけとジェスチャーする。

シェルター。ブダマツがぶっきらぼうにそう言った。聞いたことのないことばだったが何故かスッと腑に落ちた。

ほそい土のトンネルを抜けると急に広い場所へとでた。空間にひな段のようなものがあって、その上で10人ぐらいの人間が猿山のサルのように飯を食べているのが蝋燭の光でちらちらと見えた。

上のほうにホフムラもいた。

「ぐー」とシンイチのおなかが大きな音を立ててなった。微笑んだブダマツにいざなわれていちばん下へと座る。新入りだ、仲良くしてやってくれ。ブダマツはそうニホン語でみんなに言うとどこかへ消えた。

男たちはやはり黒い肌をして無言でなにかを食べていた。

うなだれて座っていると肉の入った木の器が回ってきた。そんなやつに喰わせることないねん。上からホフムラが大声で言っている。下っ端らしきその男は無視して皿を置いた。

シンイチは一気にむさぼり喰う。すっぱいような不思議な味の肉だが、からだの奥からやる気がみなぎってくる。

とにかく空腹な彼はうまい、うまいとなみだをながしながら、むさぼり食べたのだった。

食べ終えてひとごこちついていると器に入った液体が回ってきた。ひとくち飲むと酒のようだった。飲んだことのない味の酒でアルコールがきつい。

むせながら、酒を飲むのなんていつぶりだろう。

酒に弱いシンイチは一気にまわるアルコールを感じながら、いい気分で考えていた。

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『ブダマツ』
posted by Mukai Kumotaro & Duex Shrine at 05:12| 小説のようなもの