2020年01月21日

踊りの中に踊りはない

先日、ALSを患っているかたの話を教育テレビ『バリバラ』で観ました。

取り上げられていた岡部宏生(ひろき)さんは、寝たきりで眼しかうごかせなくなっていた。

眼をうごかして人とコミュニケーションをとる。眼ですべての意思表示をする。

瞬きをすると「はい」眼をそらすと「いいえ」

とても時間がかかる常識はずれの対話方法。でも、そんなコミュニケーションの仕方もこの世界にはあるのだ。

一人では生きることのできない岡部さんは、24時間365日の介護を受けている。

通常は生きるために介護を受ける。だが「これでは介護を受けるために生きているようだ。」と岡部さんは苦しんだという。

そんな彼を見ていると「生きるとはどういうことなのだろう?」と考えさせられる。

泣くことも怒ることもできない?いや日々色々なことを考えているようなので、こころの中ではいろんな感情が渦巻いているのだ。

ただ言葉にできないだけ。表情にだせないだけ。

発病する前は会社を経営していたとか。

いまはNPOを立ち上げ、学生への啓発などヘルパー不足解消のための活動に取り組んでいる。

自身が立ち上げたヘルパー事業所の職員に加え学生アルバイトなどを活用し、24時間介護を受けられる体制を自ら維持している。

けれど当たり前のように深刻な人手不足。

たいへんな仕事だからな。それを誰かは“単純労働”と呼んだとか。一説には政府が外国人労働者を確保しやすくするために呼びはじめたとの噂もある。

全身の筋肉が徐々に衰えていく難病“筋萎縮性側索硬化症”『ALS』

最初は、箸が持ちにくい重いものを持てない手や足が上がらない、走りにくい疲れやすい手足のしびれ筋肉の痛みやつっぱりなどの自覚症状を感じるとか。

日常でも一般的に起こるようなことがはじまりなのだな。

そうしてだんだん、手や足の筋肉がやせ細ってくるのだって。

不朽の名作『幕末太陽傳』を撮った映画監督の川島雄三がそうだったとか。有名なのはスティーブ・ホーキンス博士。

発症から5年以内で亡くなると言われていたが、ホーキンスは発症から50年以上も生き続けて研究活動を続けた。

伊丹アイホールでプロデューサーをやっていた志賀玲子さんがいまは、ALSを患っている甲谷匡賛(こうたにまさあき)さんに寄り添いながらALS-Dコーディネーターという活動をされている。

「ALSというダンスを踊っているんだ。」は甲谷さんの言葉。

どんな“もの・こと”の中にも踊りは隠れていると考える舞踏家としては、興味深い言葉です。

「からだ、存在のインパクトという点で、私は多くのダンサーよりも甲谷さんの切実さにノックアウトされてしまったのでしょう。」そう志賀さんは言う。

切実なからだが生み出す踊り、うごかないうごかせないからだの存在感か・・・

踊るとはどういうことか?生きるとはどういうことか?

やはりALSという病は、根源的な問いを投げかけてくるのです。

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透明な文字盤の五十音表を使い、言いたいことを1文字ずつ目線で伝え読み取ってもらう対話方法。Photo by バリバラ Web site.

参照:NHK教育『バリバラ』2020年1月16日 夜8:00放送 『障害と身体表現をめぐる旅』STスポット横浜 2016年3月31日発行
posted by Mukai Kumotaro & Duex Shrine at 11:04| ブログ?