2020年08月27日

負けないと勝つ

「負けないと勝つは違う」

『負けない構えの美しさをゴリラから学ぶ』という、学術エッセーを書いた霊長類学者で京都大学総長の山際寿一さんはそう語る。

子どもは負けず嫌いだけど、子どもの「負けたくない」という気持ちを、親が「勝ちたい」という気持ちに誤解し勝たせようとしてしまうことがある。

周囲の期待を背負うと子どもはどうしても、勝とうとしてしまう。

スポーツは勝ったあとで健闘を称えあったりして融和を目指しているので問題にはならないが、日常生活では勝つことによって自分に不利な状況になることがある。

相手のことを考えて眠れなかったり報復が心配で震えて眠ったり、集団のなかで孤立することもある。

「負けたくない」と「勝ちたい」というふたつの気持ちは、まったく異なる似て非なるものなのだそうです。

仏教は非暴力ですが、自衛のための“武”は禁じてはいません。

少林寺拳法は中国の禅宗、少林寺で生まれた自衛のための武術であり、延暦寺が自衛のために武装していたのは有名です。真言宗の総本山、高野山も武装していました。

勝つためではなく、負けないために武のちからをもつことを許す仏教。

日本の自衛隊は専守防衛です。自衛のための武力。

「敵が不法に武力攻撃を加えてきたり侵略してきたら防衛する。座して死を待つわけにはいかないから、国民の抵抗の中核となって起ち上がるのだ。という考え方である。」

そう副総理などの要職をつとめた後藤田正晴氏は『私の履歴書』に書いている。

後藤田さんは5年間の軍隊経験があり、紙一重で死線を越えたこともあった。

復員後は神奈川の物資配給を担当したが、米軍キャンプを困窮する日本の子どもや女性たちが取り巻くすがたに戦争の悲惨さを痛切に感じた。

そうした体験を経て自衛隊の前身、警察予備隊の発足にたずさわった。米軍は敵地攻撃できることも可能な軍隊にしようとしたが、国土を防衛する部隊にこだわったという。

その考えかたは終生ぶれなかった。

「いま、自衛隊の基本的な任務はなにかというと防衛なのです。不法な侵略に対する抵抗なのです。

外国へ出ていって武力行使することは、想定していないわけです。だから主任務はあくまでも専守防衛なのです。」

死の直前に沖縄で講演した際に後藤田さんは語った。

イージスショアの配備が頓挫して、自民党の議員は戦争を経験した先人が否定した敵地攻撃を軽々しく口にしだしました。

武力での攻撃は報復をまねき、軍事施設だけではなく非武装の民間人も犠牲になってしまう。それは歴史が証明しています。

大切なのは専守防衛で、勝つことではなく負けないことなのなのです。

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『モスクワの空にピカッとかく』

参照・引用:2020年7月29日 朝日新聞 オピニオン〜『明日へのレッスン』| 探求〜『多事奏論』
posted by Mukai Kumotaro & Duex Shrine at 11:31| ブログ?