2020年09月16日

ゲンパツマネー

ずいぶん前ですが、赤松利一さんの『藻屑蟹』を読了。

赤松さんのことは、戌井君が連載しているウェブマガジン“CHIRATTO”で知りました。

小説は原発の復興事業をめぐるお話。

冒頭に原発避難民が受け取る補償金のことがでてくる。

避難民が多額の補償金でパチンコ屋で遊び、飲み屋で散財し、風俗店をはしごし、高級車を乗り回していると書かれていた。

しかしこれは黒い雨の訴訟とおなじで線引きによって、補償金をもらっているひととそうではないひとにわかれているようです。

目に見えない放射能という厄介なもの。

主人公は友達に誘われて除染作業の現場監督になる。

立っているだけで50万円。その友達は除染員の人足代の手数料だけで月に300万円を手にしているという。

高線量被爆者の隠蔽の片棒をかつぎ電力会社の重役に、口止め料として300万をわたされる場面がでてきた。

これはフィクションですが、新聞にはワイロとして200万を渡したとか2,000万の口止め料を渡したなんていうそんな記事が実際にのっている。

300万を手にした主人公は荒れる。不正に加担して大金を手にしたことに対しての自己嫌悪。

電力会社を脅迫した友達は闇へと葬られ、そのかわりになるように言われた主人公は月300万の収入にこころが揺れる。

あたらしくあらわれた請負会社の担当には、月の収入が500万になることを告げられる。ただ立っているだけで500万円・・・

そんなことがあるのかなあ。と小説を読んだけれど、ある日の朝日新聞にスクープがのっていた。

『復興事業で裏金作り』

“下請けからゼネコン幹部に還流。裏金は少なくとも1億6,000万円にのぼる。東京国税局の調査で発覚”

大手ゼネコンから下請けに工事が発注され、下請けは金額を水増しして請求。ゼネコンは請求通りに支払い、下請けが過剰接待や現金でゼネコン幹部に戻すという仕組みだったそうです。

高級クラブでの一回100万以上の飲み代、ホステスにプレゼントする高級時計、フィリピン旅行の旅費に50万の小遣い、etc...etc...

汗だくになって働いていたひとが、クラブで飲み歩き支払いが一晩で300万になり家族のハワイ旅行がファーストクラスになり、ボロボロのクラウンが最高級車になる。

震災後の数年は巨額の復興マネーによる復興バブルと呼ばれて、いろんなひとたちが人生を踏み外しじぶんを見失っていったようです。

小説の主人公はそんな世界に嫌気がさして金をかえしすべてをチャラにして、人生とじぶんを取りもどす。

原発にまつわるお金のはなしは数限りなくあります。

原発マネーという、いまもひとのこころを狂わせつづけるものについての小説でした。

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『赤松利一さん』

参照:『藻屑蟹』赤松利一著 徳間文庫 | 2020年7月27日、28日、29日 朝日新聞
posted by Mukai Kumotaro & Duex Shrine at 15:36| ブログ?