2021年02月12日

はじめてをどる

じゃあ、ふりーだんすやろっか。

緊張がとけてシンイチが立ち尽くしていると、イルカのような顔をした男が言った。

ふりー、なになに?このひとはなにを言い出したのじゃろう?

男の指示でみんなが一斉にうごきだして用意をする。シンイチは邪魔にならないようにと、ひな壇のいちばん上へと移動して状況をじっと探る。あれ、なんかひとりずつやりはじめたぞ・・・もしかして、おどっているのか?

うん?このひとのうごきはおもしろいな。舌を出してくねくねとタコみたいにおどっていて、やばい、終わってしまった。

このままじゃと順番がまわって来るということか・・・わしに。

ホフムラもサルのようなポーズでおもしろくおどった。そのあと、はみ出ている内臓で縄跳びをして観ているものを爆笑させた。

シンイチも気づいたら笑っていた。笑うなんていつぶりだろうか。

じゃあ、えーっとつぎは、シンイチ?

こんなことなら来るのではなかった・・・ひと前でおどる?!そんな、そんな恥ずかしいことするぐらいなら死んだほうがましじゃ〜(((;꒪ꈊ꒪;)))

あれ、死んでるのか?

足を引きずりながらノロノロとひな段の前にある空間へと出て、さてどうしよう。

真っ黒な顔に白い目だけをギョロつかせて、みんなが興味深そうにみている。さぞやおもろい見世物じゃろう、生まれてはじめてひと前でおどるのを観るなんて。

試しにホフムラの真似をしてサルのようなポーズを取ってみた。しかしワンポーズで終わって、時間にして5秒ぐらい。

やばい、これでは終われない。素人ながらそれはわかった。みんな結構長くやってたから。

困った。これは困った。なにをしていいかまったくわからないよー。がくがくぶるぶる((((;゚;Д;゚;))))

あーあ。

しばらくなにもせずにただ立っていた。

あかん・・・もうあかん。

耐えられない〜!いうてシンイチは申し訳ないここまでです。とあたまを下げた。

静寂のあと誰かが拍手をして、つづいてみんなも拍手をした。おどろいた彼は顔をあげた。爽快な気分で座っていると、ホフムラが隣にやってきた。

いやーおもろかったで。ホフムラに言われて恐縮していると、ブダマツがやってきてマスターに挨拶にいこうという。

マスター?疑問に思いながら立ち上がるとホフムラもついてきた。

ほそいトンネルを通ると、さらにほそい土の階段を下へおりていく。さらにいくと突き当たりの和紙のようなうすいドアからひかりがもれている。

シンイチにはわからないことばで、ブダマツがなにか言った。

ブダマツが呼びかけると、なかからしわがれた声が響いた。

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『サルのポーズをとるホフムラ』
posted by Mukai Kumotaro & Duex Shrine at 09:23| 小説のようなもの