2021年04月02日

ふたたび船着場へ

市場を抜けると、あの巨大なたてものが威圧するようにまた見えてきた。

船着場につくとブダマツとホフムラが待っていた。

すみません!と大声でカミソリが言うと、おそい。とブダマツがどうでもよさそうに言った。ホフムラは笑っている。どうやらいつものことのようだった。ブダマツからソーセージをもらうと列にならぶ。

ニホン語に気をつけろ。ブダマツが言う。どういうことかわからないがみんなと一緒に、はいと答える。

真っ赤な顔をしたオニたちが銃をもってこちらを見つめている。シンイチはほんとうにだいじょうぶなのかと心配になった。

どんどん列はすすんで、また暗闇へ。

トンネルをぬけると、まばゆい明かりが目に飛び込んできた。老婆を見ると忘れていた手の傷がうずいた。

まずはカミソリが舞台にあがって、えいっと包丁で股間を切り落としてじじいにわたす。カタンと音をたてて天秤はイチモツのほうへと傾いた。

カミソリは、老婆からチケットをもらうと黒いカーテンの先へと消えた。

ネクスト!

イナズマが威勢よく、よー!と叫ぶと股間に包丁を当てるが、ほよよよと逃げ越しになる。すかさずジジイがバットで思いっきり殴ったが、昨日のホフムラのほうが強烈だった気がした。オニたちは笑っている。

切り直して、チケットをもらい泣きながらイナズマは奥に消えた。

ネクスト!

いよいよシンイチの番だ。舞台にあがるとばばあが鼻をふんふんと鳴らして、ポコないやつか。と白目を剥いた。

ニホン語なので無視する。

包丁を持つとがたがたと緊張で震えた。その震えを利用して股間に当てるとソーセージはみじん切りになった。オニたちが爆笑している。

じじいがうんざりしたようにじぶんでのせろとゼスチャーをする。ソーセージを集めて天秤に乗せるとカタンと傾いた。老婆は胡散臭そうにしながらもチケットをシンイチに渡した。

ほっとした瞬間に、まだ落ちてるぞ。とじじいが言った。うん、そうかいな。とシンイチが地面をキョロキョロと探していると、じじいが凄まじい形相でシンイチのほうを睨んでいるのに気づいた。

忘れるようなことは要らないことだ。エムのことばが閃いた瞬間にシンイチは渾身の大声で、あー!!と叫んでいた。

じじいは耳を塞いで、いけ。とゼスチャーする。

黒幕のなかに入ると、カミソリとイナズマが待っていて、危なかったなあ。とささやいた。

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『リターン・オブ・ザ・奪衣婆』
posted by Mukai Kumotaro & Duex Shrine at 09:40| 小説のようなもの