ああ春の向こうからどっと駆けてきてふくしまの子らがわれの手を引く 齋藤芳生
東京五輪の聖火リレーがなし崩し的にはじまった。
聖火は被災地も走ったようです。
けれども沿岸部にできた最新施設の近くをわずかに走るだけだった。復興した場所だけを見せて、置き去りの地域は見てみぬふりのような感じ。
「新しくつくったとこばっかり走って何がいい?悪いところも発信しろっていうの。自由に帰れない、除染もまだの場所だって多い。ひとの生活を戻すことが最優先でしょ、順番が逆。」
福島県大熊町の帰還困難区域に自宅がある元農家の男性は憤る。
あと1年で保管不能となる汚染処理水を処理しきれない放射性物質が残るのに、国は海に流すことをほぼ決定、地元のかたがたの反対を無視。
核燃料と比べるとはるかに扱いやすい使用済み燃料の取り出しは遅れつづけ、廃炉作業はスタートライン上か、まだスタートラインにも立てていないのが現状。
2021年だった目標は、10年遅れて2031年にずれ込んだ。ただこれもあくまで目標、溶け落ちた核燃料の状態は不明で廃炉の最難関の取り出し時期は未定。
廃炉完了予定は40年後、50年後?このままだと冗談ではなく、あと100年はかかるのかも・・・
困ったなあ。
人類は自分たちでは制御不能のたいへんな怪物を生み出してしまったのです。そしてその恩恵を受けていたじぶんたち。
「五輪の放送がはじまったら、テレビのプラグを抜くつもりだ。」という福島県飯館村のかたの言葉も新聞で読んだ。そこには福島の原発でつくられた電力を消費していた東京都民への怒りも語られていた。
前回の東京五輪ではこころから祝福しないひとは、ひとりもいなかったでしょう。
今回は残念だが最初からつまずいている。
「東日本大震災の被災地は、復興理念にある“日本のあるべき姿”になっていない。まちの基盤は整っても、新たななりわいを創出しなければ、ぴかぴかの過疎になるだけだ。」と東野真和、朝日新聞編集委員は語る。
1万8000人以上のひとが犠牲となった東日本大震災。
行方がわからないかたは宮城県で1217人、岩手県1112人、福島県196人。身元がわからない遺体が宮城県警に8体、岩手県警に49体、まだあるのだとか。
行方不明の身内がいる家族にとっては、オリンピックなんてほんとうにもう、どうでもいい他人ごとの大騒ぎでしょう。
津波や福島第一原発事故などで最大、11万人を超えるかたたちがふるさとを追われた。いまだにふるさとに帰れないかたが4万人以上いる。
ふくしまの花も実もある平凡なふるさとともう誰も笑えず 駒田晶子
『アノトキウサギ』
参照、引用:2020年2月3日 3月7日 3月8日 3月9日 毎日新聞 2020年3月4日 3月6日 3月9日 2021年4月10日 朝日新聞 2021年4月8日 神戸新聞